WBCメキシコ代表の快進撃の原動力となっているのが、外野手のランディ・アロザレーナ(レイズ)です。日本戦までの5試合で、1番・レフトを務め、18打数7安打、打率.471の猛打を記録。プールCのMVPに輝き、リードオフマンとして打線の火付け役となっています。塁上でドヤ顔で腕組みするポーズもすっかりおなじみです。
プエルトリコ戦でも、アロザレーナは3出塁(1安打2四球)し、7回に同点のホームを踏み、8回には左中間への大飛球をジャンプ一番好捕しました。これによって4点差をひっくり返す逆転勝利に大きく貢献しました。
過去2年連続で20本塁打と20盗塁を達成していることからも分かるように、アロザレーナはパワーとスピードが持ち味のダイナミックな選手です。そして、彼は大舞台で無類の強さを誇る選手としても知られています。
彼の名が一躍広まったのは、2020年のポストシーズンでした。それまでメジャー出場はわずか通算42試合にすぎなかったアロザレーナは、ヤンキースとの地区シリーズ第1戦で、球界屈指の本格派右腕ゲリット・コールからバックスクリーン右側へ本塁打を放ちました。
この特大弾が、伝説の幕開けとなりました。そこから3試合連続本塁打、アストロズとのリーグ優勝決定シリーズでは4本塁打を放ち、新人野手では史上初のシリーズMVPに選ばれました。そして、ドジャースとのワールドシリーズでもアロザレーナの勢いは止まりませんでした。第3戦でプレーオフ8号を放ち、単年の歴代最多タイ記録に並び、翌日には新記録を樹立しました。
この短期決戦での圧倒的な勝負強さをWBCでも遺憾なく発揮し、メキシコ代表の「顔」となったアロザレーナですが、実は彼の出身はキューバです。彼はU-16やU-18の代表に選ばれるほどの逸材でしたが、19歳だった2014年に父が急死しました。家族の生計を支えるため、アロザレーナは亡命を決意し、翌年に実行に移しました。真っ暗な夜に、まるでカヤックのような粗末なボートでメキシコ湾へと漕ぎ出し、サメも泳ぐ危険な海を8時間かけて渡り、ようやくメキシコに上陸し、命がけの亡命を成功させました。
その後、メキシカン・リーグでのプレーを経て、2016年7月にカーディナルスと契約を結びました。また、彼の愛娘が生まれた土地であることから、アロザレーナはメキシコに並々ならぬ愛着を持っています。現在、彼の母、妻、子供、兄弟は全員メキシコ在住で、アロザレーナも毎年オフになると決まって「帰省」しています。
ワールドシリーズでの大活躍から数か月後の2021年2月、アロザレーナはインスタグラムを通じて「メキシコの市民権をください。そうすれば、メキシコ代表としてWBCに出場できます。私が望むものはそれだけです」と大統領に訴えました。そして、2022年10月になってようやくメキシコの市民権を獲得し、晴れて今回のWBC出場につながりました。
「新たな祖国」を代表して戦う喜びをフィールド上で遺憾なく表現するアロザレーナはメキシコ代表としての熱い想いと、才能あふれるプレー。アロザレーナの強いメンタルや、亡命を経て獲得したメキシコ市民権というバックグラウンドが、彼のプレーにさらなる厚みを与え、メキシコ代表での活躍につながっているのでしょう。
RANDY ROBS IT!!! MY GOODNESS 🤯😳
📺: WBC on FS1 pic.twitter.com/qmtqs6NVfE
— FOX Sports: MLB (@MLBONFOX) March 21, 2023
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